社長、後ろを見ながらお車を運転されますか?

社長、後ろを見ながらお車を運転されますか?

~ご多忙の経営者が最小の努力で会社のお金の流れを把握するには~

 

「決算書の読み方を教えてやってください」

というリクエストが続いた時期がありました。

 

どれも、

事業承継が視野に入ってきた社長からで、

次期社長の教育の一環として、

というケースでした。

 

「何のために?」
「決算書の読み方が分かったら、その方(後継)者さん)にはどんないい事がありますか?」

 

ご多忙の社長や、未来の社長にとって、

時間をかけてこれから決算書の読み方を習得することの意味が

わたくしにはのみ込めず

思わずお聞きしてしました。

 

なぜかといいますと…。

 

決算書というのは、

過去の事実のデータなのです。

 

社長がお車を運転なさる時、

進行方向、前を見ますよね。

後ろをみてアクセル踏みますか???

 

決算書は

税金の計算をするために作られたともいわれ、

専門家用に構成されているため、

最初は理解するのに時間がかかります。

 

わたくしは以前、

結構大きな会社に勤務していました。

ボスも大ボスも、

株式投資をするときは決算書を見ていたようですが、

自分のチームのマネジメント、意思決定、

お金の使い方についての判断をするときには、

そんな難しい専門的な書類ではなく、

自分の都合のいい(実務家にとって見やすい)

レポートを使っていました。

 

なので、

「なぜ、決算書???」

と思ってしまいました。

 

 

経営上の意思決定をする場合、

多くの社長が求めるのは、

正確さではなく、

タイムリーさです。

 

もし会社の業績データが3ヶ月遅れで上がってきたとしたら

果たして間に合うでしょうか?

 

経営者さんが会社の数字を把握する仕方は大きく分けて

二つのパターンがあるように思います。

 

一つは税理士さんに任せきり、

何ヶ月か遅れで届けられる試算表を眺める。

税理士さんが説明をして下さる場合もありますが、

社長さんにとっては、会計の専門用語が多すぎて、

 

理解するのにご苦労されているように思います。

 

もう1つのパターンは

何とかご自身だけで頑張ろうとされ、

会社のお金のことは全部自分でやらなければと、

簿記や仕分けから入るパターン。

 

社長は、営業や人材育成等、

他にもいろいろと仕事があるうえに、

お勉強では、いくら努力と根性をもってしても、

なかなか続かないというのが多くの方の本音ではないでしょうか?

 

社長が事務所で机に向かっていたら、

色々と割り込みがありますよね。

 

 

親分肌で、

行動力ある社長が、

忙しい時間を割いて

経営判断に必要な数字を把握しようという意気込みは

本当に素晴らしく、

こういう決断ってすごいなぁと思います。

 

ただ…

社長補佐官(R)としては小さな懸念があります。

 

1つ目、

そもそも社長というのはその会社の中で最も高価なリソースです。

私はよくこういう風にお伝えします。

 

その会社の年商÷営業日数÷営業時間 =

1時間あたりその会社が稼ぎ出さなければいけない金額

社長というのは、

まさにその金額を背負っている方で

このスケールで考えることを要求されているポジションの方です。

 

その方が仕分けや簿記といった、スタッフの仕事をしていて

いいのでしょうか?

この選択は、

経済的に合理性がありますか?

 

社長には何をおいてもすべきことがあります。

 

その1営業

その2人材育成

その3 経営の意思決定

 

 

小さな会社の社長にとっての

主な役割ではないでしょうか?

 

そう思った時、

先ほどの経営数字の認識の

 

パターン1、

会社のお金の事は税理士さんに任せきりで、

たまに試算表を説明されても、

専門用語が多すぎて、

現実感が湧かない。

 

パターン2

全て自分でと思って、

簿記からスタートして、

詳細に積み上げて現状把握しようとする策。

 

ちなみに、

調べてみたのですが、

一説によると

簿記3級を取得するために、

独学だと130時間、

学校に行くと70時間

くらいかかるそうです。

 

130時間というのは、

1日8時間働くとしたら、

ざっくり16日に相当。

3週間くらいでしょうか?

 

あまり、努力や投入した時間に見合った経営効果は

得られないかもしれません。

 

だとしたら、

思い切って、

ざっくりでいいからと割り切り、

現場の当たりをつけてみませんか?

例えば、

会社の収益性を把握するにあたり、

大きな7つのパートが抑えられれば

会社の収益構造がさっと

感覚的につかむことができたら…

 

ちょっとうれしくないですか?

 

勘定科目や、

仕訳といった専門的なことは

ちょっと忘れて、

会社のお金を7つのパートに分類。

 

ざっくりあたりをつける

というのがポイントです。

 

一度当たりがつけば、

それを洗練させて、

だんだんと正確に仕上げていくということも可能です。

わたくしがコンサルタントとしてとても心配になるのは、

現状がまったく見えていないことなのです。

 

最初はざっくりとしと、

現状を把握する。

 

次に、

将来目指す理想の収益構造を描いてみる。

 

この二つが分かれば、

2つの間のギャップが分かりますので、

理想に近づくための手は、いくらでも打てるのです。

 

そのためには

何から始めたらいいのでしょうか?

ちょっと勇気がいるかもしれませんが

いったん、B/S、P/L といった専門用語は脇に置いておきましょう。

 

これからわたくしがいくつか質問していきますので

それに順番に答えてください。

 

質問1現在の預金の実残高はおいくらですか?

これは通帳を見ればわかりますね。

 

質問2ざっくりでいいので先月の売上高を教えてください

10万円、100万円単位ででも結構です

 

質問3粗利率を教えてください。

もしすぐには分からないようでしたら、昨年の決算書をちょっと持ってきてください。

わたくしが計算しましょう

 

質問4人件費を教えてください。

具体的には月給の合計、

それと在籍している社員さんの数に変化があるのであれば

それも教えてください。

 

質問 5今年特別に始めたことはありますか?

去年まではやっていなかった取り組みで今年新たに始めたこと、

例えば Web に広告を出し始めたとか

ホームページをリニューアルしたとかそんなことです。

 

質問6 売掛金の回収は翌月末でよろしいでしょうか?

 

質問7買掛金の支払い(仕入れの支払い)は翌々月末でよろしいでしょうか?

 

質問8決算納税、中間納税などの予定を教えてください。

もしお分かりにならない場合は

税理士さんに確認をすれば教えてくれます。

 

質問9借入金の返済額を教えてください。

 

質問10減価償却費の額を教えてください。

もし分からなければ、

昨年の決算書見せてください。

 

ここまでお尋ねしたこと、

10個の質問があったと思います。

 

これをお聞かせいただければ、

社長の会社の収益構造をざっくりとつかむことができます。

 

細かいことから積み上げて、

完璧主義に陥って、

そのために現状把握が遅れたり、

あるいは、

そもそも、

社長としての最も大切な仕事、

営業や人材育成、商品開発、

意思決定の時間が取れなくなり、

チャンスを逃してしまうようでは

残念。

本末転倒ですね。

 

経営者にとって必要な数字とは

意思決定に必要な数字。

 

まずはざっくりと、

タイムリーに。

 

タイムリーにというのがポイントです。

チャンスをつかむためにも、

ざっくりとタイムリーに現状把握をしてみましょう。

 

親分肌で行動力溢れる社長さんで、

ざっくりでいいから

自社のお金の流れを把握したいとおっしゃる方、

こちらからご連絡下さい。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献:本文中の会社のお金の流れの現状把握をするための10の質問は下記を参考にさせていただきました

コンサルタントの経営数字の教科書 和仁達也著 かんき出版

第3章 決算書なしでも作れる「お金のブロックパズル」の作り方